FIP(猫伝染性腹膜炎)の診断法と治療法

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FIP(猫伝染性腹膜炎)の診断方法

FIP診断の難しさ

FIP診断の難しさ

猫伝染性腹膜炎(FIP)は、何かを検査したら直ちに診断できるような検査法が存在しません。これはどの検査を用いたとしても、猫コロナウイルスの存在を示すのみで、FIPを引き起こす変異ウイルスの検出ができないためです。したがって、FIPの診断は、稟告(病歴)、臨床症状と複数の検査結果を総合的に考慮しておこなう必要があります。
また、同様の症状を示す疾患(腹膜炎・胸膜炎、リンパ腫、膵炎、胆管炎、心筋症、外傷など)の除外も診断において重要です。

初期診断

問診と病歴聴取

飼い主さまからの問診や病歴は診断において非常に重要です。
元気消失、発育不良、食欲低下、体重減少、お腹が張ってきた、呼吸が苦しそうなどの症状はあるか。発症前に、コロナウイルスが突然変異してしまうようなイベント(ストレス、環境変化など)があったかなどを詳しくうかがいます。
症状はウイルスに侵された臓器に関連するため多岐にわたります。腹水や胸水貯留による体重減少や呼吸困難、中枢神経が侵されることによる痙攣や運動失調、目の症状が現れることもあります。なお、発熱は必発ではありません。

このような情報かたFIPを疑います
  • 若齢猫(特に4ヶ月〜2歳)
  • 集団飼育環境での生活歴
  • 未去勢雄猫
  • 特定の純血種
  • 免疫抑制状態(猫白血病ウイルスや猫エイズウイルス感染など)
身体検査
  • 元気消失、沈鬱
  • 食欲不振
  • 発育不良
  • 黄疸
  • リンパ節腫大
  • 貧血(粘膜蒼白)
  • 腹部膨満
  • 呼吸困難

血液検査

CBC(完全血球検査)

CBC(完全血球検査)では軽度から中程度の貧血や白血球の増加が見られることが多いです。播種性血管内凝固を起こしている場合は血小板数の減少も見られることがあります。

生化学検査

生化学検査では高蛋白血症が多くの場合見られ、特にグロブリンと呼ばれる蛋白質の増加が特徴的です。高グロブリン血症はウェットタイプの約50%、ドライタイプの約70%で認められます。その他、傷害を受けている臓器によっては高ビリルビン血症や肝酵素の上昇、腎数値の上昇などが確認されることがあります。

血清蛋白電気泳動

血清蛋白電気泳動を実施すると、FIPの猫では多クローン性γ-グロブリン血症と呼ばれるパターンが見られることが多いです。

貯留液の検査

ウェットタイプのFIPでは腹水や胸水の貯留が見られます。これらの液体は通常、無色から麦わら色でネバネバした性状を示し、蛋白質の濃度が高く細胞数が比較的少ないのが特徴です。顕微鏡観察では好中球やマクロファージが見られることが多いです。

確定診断のための検査

抗体検査

抗体検査ではFIPの猫の多くで抗体価の上昇が確認されますが、猫腸コロナウイルスの感染でも上昇するため、単独での診断は困難です。

病理組織検査と免疫組織化学染色

病理組織検査と免疫組織化学染色はFIPの診断のゴールドスタンダードとされています。病理組織検査では血管炎や肉芽腫が確認され、免疫組織化学染色では抗体を用いて組織内のウイルス抗原を直接検出します。

PCR法

PCR法では検査試料中のウイルス遺伝子を検出します。消化管以外の部位からウイルス遺伝子が検出された場合はFIPを強く疑う根拠となります。

FIP(猫伝染性腹膜炎)の治療方法

当院では、FIPと診断された猫に対して最新の抗ウイルス薬による治療をご提供しています。治療は通常84日間継続し、猫の状態や症状に応じて適切な薬剤を選択します。

FIP(猫伝染性腹膜炎)の主な治療薬

レムデシビル

レムデシビルはもともとRNAウイルスに対する抗ウイルス薬として開発され、RNA依存性RNAポリメラーゼを阻害してウイルスの複製を抑制します。注射薬であるため、内服が困難な重症例に適しています。

GS-441524

GS-441524はレムデシビルの活性代謝物で、同様にウイルスのRNA複製をブロックします。当院では品質保証された製剤を使用していますが、日本では未承認薬のため、十分な説明と同意のもとで使用しています。

モルヌピラビル

モルヌピラビルもRNA依存性RNAポリメラーゼを阻害してウイルス複製を抑制する薬剤です。FIPウイルスへの効果が確認されていますが、猫での治療については研究段階にあります。

FIPの治療で大切なこと

FIPの治療で大切なこと

FIPの治療において最も重要なのは、早期発見と早期治療です。
治療を始めたら、定期的に検査をおこない、効果や副作用を確認しながら進めることが欠かせません。推奨されている治療期間(84日間)をしっかりと完遂することが、完全な回復につながります。
また、神経型FIPなど特殊なタイプでは、治療の方法が異なる場合もあります。そのため、それぞれの症状や状況に応じて、最適な治療計画を立てることが必要です。

当院では、FIPと診断された猫ちゃんとご家族に寄り添いながら、最適な治療プランをご提案しています。

治療についてのくわしいご説明や、不安点・疑問点があれば、お気軽にご相談ください。

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